ポジティブの育て方|成功体験で育つ自己肯定感の木

読むマッサージ

こんにちは、心をほぐすセラピスト:あやかです。

前の記事で、「ネガティブは悪者ではなく、私たちを守る大切な防衛システムであること」、そして、「ポジティブは才能や性格ではなく、経験を通して育っていくスキルであること」をお話ししました。

ここまで読んでくださった方の中には、「ネガティブが必要なのはわかった」「ポジティブが才能じゃないのもわかった」でも、「じゃあ具体的にどうやって育てればいいの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、心理学の理論をもとに、「ポジティブが育つ仕組み」をできるだけやさしく、順を追ってお話ししていきます。無理に前向きになる必要も、気合で変わる必要もありません。必要な材料と順番を知っておくだけで大丈夫です。

心理学の視点で見る「ポジティブ」

一般に、ポジティブというと「前向き」「明るい」「いつも元気」といったイメージを持たれがちです。

しかし、認知科学の視点では、ポジティブは学習によって鍛えられる脳の情報処理(思考と行動)パターンとして考えられています。つまり、経験を通して育つ人生を豊かにするスキルだと言えます。

一方、心理学の視点では、ポジティブはいくつかの心の要素が組み合わさって生まれる心の状態だと考えます。また、ポジティブは「ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)」の実現に繋がるものと捉え、ネガティブな状況も乗り越え、より良く生きるための「力」として科学的に探求されています。

ポジティブは、

  • 自己肯定感(ありのままの自分を認める)
  • 自己効力感(自分はできるという信念)
  • 自己有用感(社会や他者に貢献できる感覚)

の3つが核となり、さらに、精神的回復力楽観性感謝の心自己受容没頭・熱中目標思考性など、さまざまな要素が加わって構成されます。

これらが少しずつ育ち、支え合っている状態を、まとめて「ポジティブ」と呼んでいる、と考えるとわかりやすいかもしれません。

これらの要素が少しずつ育っていくことで、人は自然と前に進めるようになる、つまり気付かないうちに”ポジティブな状態”へと近づいていくことができるのです。

安心の土台「自己肯定感」

自己肯定感とは、無理に強くなることではありません。苦しみや悲しみ、つらさを、少し和らげながら受け止めてくれる――そんな「心の免疫力」でもあります。

自己肯定感の第一人者、心理カウンセラーの中島輝氏は、自己肯定感を「木」にたとえ、自己肯定感は「6つの感」によって成り立っていると提唱しています。

6つの感がそろうことで、心の免疫力が高まって外部からの影響を受けにくくなり、生きる力、自己肯定感が育まれるのです。反対に、それぞれの感覚がダメージを受けると、木全体のバランスが崩れるため、それぞれについて理解しておくことが大切です。

  1. 根(自尊感情): 自分には価値があると感じる感覚
  2. 幹(自己受容感): ありのままの自分を認める感覚
  3. 枝(自己効力感): 「自分にはできる」と思える感覚
  4. 葉(自己信頼感): 自分を信じられる感覚
  5. 花(自己決定感): 自分で決められる感覚
  6. 実(自己有用感): 誰かの役に立っているという感覚 

この木には、大切なポイントがあります。それは、下から順番に育つということ。根が弱いまま枝を伸ばそうとしても、木は不安定になります。ポジティブな状態とは、この自己肯定感の木が実を収穫できるまで、しっかり育っている状態のことだと言えます。

無理にポジティブになろうとして苦しくなるのは、育てる順番が逆になっているからかもしれません。

心理カウンセラー:中島輝さんオフィシャルサイト
https://teru-nakashima.info

行動できる力「自己効力感」

心理学者アルバート・バンデューラは、人が行動できるかどうかは、「自分ならできる」と信じられるかどうかに大きく左右されると考えました。この感覚を、自己効力感と呼びます。

さらに、アルバートは「自己効力感を高める4つの情報」として、

  1. 遂行行動の達成:自分の力で達成したという成功体験
  2. 代理的経験:他者の姿を見て「自分にもできそうだ」と感じること
  3. 情動的喚起:心や身体の状態(リラックスしているか、緊張しているか)
  4. 言語的説得:励ましや肯定的な言葉を受け取ること

この中でも、最も強いのは、自分の力で達成したという成功体験です。大切なのは、成功体験を増やそうと頑張ることではありません。「できたことを、できたと認識すること」です。

大きな目標を立てる必要も、人と比べる必要もありません。

小さく分けて、できたら立ち止まり、受け取る。その積み重ねが、自己効力感という枝を少しずつ太くしていきます。

激動社会の中の自己効力 著:アルバート・バンデューラ
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世界と繋がる感覚「自己有用感」

「自己有用感」という言葉自体は、日本の教育や臨床現場で多く使われてきた概念です。

海外の心理学では、この感覚は「有能感」「関係性」「意味」「貢献感」といった複数の要素として研究されています。言葉は違っても、「自分の存在や行動が、誰かや何かにつながっていると感じられること」が、人の心を支える重要な要素である点は、共通しています。

自己肯定感が「安心して立てる土台」をつくり、自己効力感が「行動できる力」を育てると、やがて人は、自分の行動や存在が誰かや何かとつながっていることを自然と実感できるようになります。

それが、自己有用感です。

自己有用感は、特別な成果や大きな成功によって育つものではありません。誰かの役に立とうとしたこと、声をかけたこと、話を聞いたこと、任されたこと、感謝されたこと。あるいは、「自分がやったことで、少し空気が和らいだ」「誰かの助けになれた気がする」と感じられた、ほんの小さな経験の積み重ねによって育っていきます。

それは、「自分はここにいていい」「自分の行動には意味がある」と、静かに実感できる経験です。自己有用感とは、誰かに評価されるための感覚ではなく、世界とのつながりを自分の中で感じられる感覚なのかもしれません。

  • 誰かと挨拶を交わした
  • 話を聞いたら、少し相手の表情が和らいだ
  • 自分がいることで、場の空気がほんの少し落ち着いた気がした

そんな、ごく小さな経験の中でも、自己有用感は育まれます。

自己有用感は、「役に立たなければ価値がない」というプレッシャーとは正反対の感覚です。むしろ、「特別なことをしなくても、すでに関係の一部として存在している」という安心感に近いものだと言えるでしょう。

無理に誰かの役に立とうとしなくても大丈夫です。成果を出そうと頑張らなくてもかまいません。

自己有用感は、「ちゃんとつながっている」と感じられる経験の積み重ねによって、静かに育っていくものなのです。

著作者:prostooleh/出典:Freepik

成功体験は木を育てる「栄養」

では、自己肯定感の木を育てるために必要なものは何でしょうか。

それが「成功体験」です。成功体験は、自己肯定感の木を大きく成長させ、ポジティブな状態を永続的に安定させるために必要な「栄養」なのです。

ここで言う成功体験とは、大きな成果や特別な結果のことではありません。「やろうと思ったことをやれた」「少し前に進めた」「昨日より楽にできた」、そんな小さな”できた”という実感です。

例えば、人と話すことに強い緊張を感じる人にとっては、「今日は知らない人と一言会話ができた」という出来事も、十分すぎるほどの前進です。

  • エレベーターじゃなく階段を選んだ
  • 目をそらさずにあいさつができた
  • いつもより少しだけ早く家を出られた
  • いつもは後回しにしていたことができた
  • 「やってみよう」と思えた

そんな小さな行動のひとつひとつは、自分の中で確かに起きた変化であり、立派な達成です。自分にとってうれしいこと、心が少し軽くなることは、それだけで価値のある「成功体験」なのです。

成功には、他人と比べるための大きさや順位はありません。1億円の売り上げを達成することも、寝坊しがちな朝をきちんと起きられたことも、どちらも、その人の人生の中で意味を持つ出来事です。

どんなに小さく見える一歩でも、「できた自分」を認めて、喜んでいい

それは、次の一歩へつながる大切な土台になるのです。

著作者:freepik

自己肯定感の木が育つと「人生」が始まる

自己肯定感の木は、ただ立っているだけの存在ではありません。

木が育つことで、家を建てることができます。心も身体も安心して休める場所、自分自身に戻ってこられる場所が生まれます。自己肯定感の木でできた家はまさに安心の土台=ホームになります。

そして、生活に必要な道具も作れます。考える力、選ぶ力、行動する力。「やってみよう」「自分にならできる」という気持ち。これは自己効力感や自己信頼感が育つことで手に入るものです。人生の幅を大きく広げることができます。

そして、花が咲き実がなれば、それを味わうことができます。何をするか、誰とするか、さまざまなことを自分で選択する意思。それを嬉しい、楽しい、美味しいと感じる心の余裕。そして、誰かと分かち合いたいと思える気持ち、誰かの役に立ちたいという気持ちに繋がります。

心理学でいうポジティブな状態とは、「安心感」や「健全さ」が基盤となり、心身ともに満たされ、社会的なつながりの中で充実感を得られる状態を指します。

著作者:freepik

まとめ:必要な材料が揃えば大丈夫

ポジティブは、無理に手に入れるものではありません。材料さえあれば、順番に、自然と育っていきます。

成功体験という栄養を受け取りながら、自己肯定感の木を育て、そのそばで少しずつ暮らしを整えていく。それが、心理学が教えてくれるポジティブの育て方です。

では、その「小さな成功体験」は、日常の中でどうやって作っていけばいいのでしょうか。

次の記事では、自分を子どものように信じ、励まし、寄り添いながら育てていくという視点から、ポジティブを育てる具体的な歩み方をお話ししていきます。

あなたの心に、立派な木が育ちますように。

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