ポジティブじゃなきゃいけないの?ネガティブが必要な理由をわかりやすく解説

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こんにちは、心をほぐすセラピストのあやかです!

少し前まで、SNSのショート動画などで、「ポジティブになれるマインドセット」や「前向きに生きるための考え方」といった言葉をよく見かけました。“なりたい自分に変われる”というニュアンスのものが多かったように思います。オンラインでのサロンやスクールやセミナー、本やSNSなど、どこかの誰かの体験や考え方が短い言葉に切り取られ、使いまわされ、まるで誰にでも同じように効くもののように広まっていきました。

その一方で、無理にポジティブに考えようとしたり、前向きでいなければならないと思うあまり、かえって苦しくなっているように見える人たちを見かけることも増えました。前向きでいようとすればするほど、自分の本当の気持ちが置き去りになってしまっているように感じる場面もありました。

本来、「ネガティブは悪い、ポジティブは良い」という単純な話ではありませんし、心のバランスは、誰かに教わった考え方を取り入れただけで簡単に整えられるものでもありません。

ときに「前向きでいよう」とすることが、不安や違和感、助けを求めるサインに気づかない方向に働いてしまうこともあります。間違った形のポジティブさは、人を支えるどころか、心のSOSを静かにかき消してしまうことさえあります。

きっと、私と同じように、「ポジティブでいなきゃいけないのかな?」とどこか腑に落ちなかったり、周りの誰かが少し無理をしているように見えて心配になったことがある人も多いのではないでしょうか。

この記事では、認知科学の視点を交えながら、「ポジティブとは何か」「ネガティブとは何か」という基本的な部分を整理しつつ、なぜネガティブが私たちにとって必要なのか、そしてバランスがなぜ大切なのかについて、私なりの視点でお話ししていきたいと思います。


ネガティブとポジティブ

そもそも、「ネガティブ」と「ポジティブ」とは何なのでしょうか。日常でよく使う言葉ですが、意味をきちんと説明しようとすると、意外と難しいものですよね。

著作者:wayhomestudio/出典:Freepik

一般的には、ネガティブは物事を否定的・後ろ向きに捉えやすい状態を指し、ポジティブは肯定的・前向きに捉えやすい状態を指す言葉として使われています。

同じ出来事が起きたとしても、どう感じ、どう反応するかによって、世界の見え方は大きく変わります。ネガティブとポジティブは、そのときの受け取り方や反応の傾向を表す言葉、と考えるとわかりやすいかもしれません。

それでは、認知科学の視点から「ネガティブ」と「ポジティブ」を見ていきましょう。

認知科学は「心を知る科学」

認知科学とは、「心って何だろう?」「どうやって心は動いているんだろう?」という疑問を扱う学問です。心理学やAI、言語学、脳を研究する神経科学、哲学、人類学など、いろいろな分野の考え方を組み合わせて、心のはたらきを“情報のやりとり”として理解しようとするのが特徴です。

認知科学では、ポジティブとネガティブを「良い」「悪い」とジャッジするのではなく、どちらも人間にとって大切な心の機能として考えます。

  • ネガティブな感情:危険を知らせて身を守るシステム
  • ポジティブな感情:行動や学びを広げるためのスキル

つまり、ネガティブもポジティブも性格の良し悪しではなく、脳の情報処理パターンの違いから生まれる反応なのです。

ネガティブは脳の「防衛システム」

ネガティブな感情には、脳の扁桃体が深く関わっています。扁桃体は、危険やストレスをいち早く察知し、体を守るために反応する「警報装置」のような場所です。

「やったことがない」「失敗するかも」と感じると、扁桃体が「危険だ!」と警報を鳴らします。すると、心拍数が上がる・体がこわばる・頭が”やめておこう”と判断する、といった反応が起こります。

つまりネガティブとは、弱さではなく、生きるための本能的な「防衛システム」です。

2025年の現在も、人間の脳は原始時代の設定のまま、「安全に生きられている現状を維持しよう」とするようにプログラムされています。だからこそ、新しいことに挑戦しようとすると、まずネガティブな反応が出るのは当然なのです。

ポジティブは経験から育つ「創造スキル」

一方、ポジティブな感情には、脳の前頭前野や報酬系・ドーパミンが関わっています。新しいことに挑戦して「できた!」「少し進んだ!」と感じた瞬間、脳はドーパミンを放出し、「またやってみたい」という気持ちを生み出します。

その「やってよかった」という記憶が積み重なることで、次の行動へのハードルが下がる・新しい挑戦が怖くなくなる・「きっとできる」という自信が育つ、といった変化が起きていきます。

つまりポジティブとは、根拠のない明るさではなく、脳が経験を通じて獲得した「創造スキル」なのです。

確かに、他人の成功体験を聞くことは、心理学でいう「代理経験(モデリング)」にあたり、他者の成功を「自分ごと」として捉え、自分にもできそうだと感じることで、ドーパミンなどが分泌され、一時的に”ポジティブな気持ち”になることもあります。

しかし、そこには実践や体験が伴わない場合、本質的な自信は育ちにくく、かえって失敗体験を増やしてしまうこともあります。

ポジティブを育てるには、自分自身で経験を積み、乗り越え、学びを積み重ねるという、「実働」が必要なのです。

ネガティブが必要な理由

では、なぜネガティブは必要なのでしょうか。それは、ネガティブが私たちに「今の状態」を正確に知らせてくれる役割を持っているからです。

ネガティブな感情は、「まだ準備が足りないかもしれない」「少し立ち止まったほうがよさそう」「このまま進むと負担が大きいかもしれない」といった形で、現在の状況を教えてくれます。

これは、行動を止めるためのものではありません。行動の仕方を調整するための情報です。

ネガティブがあるからこそ、今は進むべきか、休むべきかを判断できる。準備や情報収集の必要性に気づける。無理をしていないか、自分を確認できる。助けを求めるという選択肢を持てる。といった判断が可能になります。

ネガティブは、挑戦の邪魔をする存在ではなく、安全に、そして着実に挑戦を「続けられる形」に整えてくれる感覚とも言えます。

長い人生の中で、勢いだけで進み続けることはできません。ネガティブは、今の自分の体力や環境を踏まえたうえで、「どう進むのが現実的か」を考えるための重要な材料なのです。

だからこそ、ネガティブは抑え込むものでも、無視するものでもなく、判断の材料としてきちんと受け取るべき感情なのです。

ネガティブな感情が出やすいということは、それだけ現実をしっかり見ようとしていたり、計画性や責任感を持って物事に向き合おうとしているサインでもあります。

ネガティブを消してしまったら

「ネガティブは悪いもの」「前向きでいなければいけない」。そんな考えが強くなりすぎると、ネガティブの防衛システムを無視しようとすることが起きます。

ネガティブを無視すると、一時的には勢いよく進めるかもしれません。しかし、「したい」と「しなきゃいけない」が混同して、頭と心が少しずつずれていくこともあります。思っていたようには上手くいかず、どうすれば良いのかわからなくなり、不満や疲れが静かに積み重なっていくこともあります。そして気づいたときには、心が限界を迎えてしまうこともあります。

ネガティブを感じないようにすることは、強くなることではありません。それは、自分の状態が見えなくなる、というハイリスクな状態です。自分の現在地も、レベルも、危険もわからないまま、この現実世界に放り出されているようなものです。

だからこそ、ネガティブは「消すもの」ではなく、「正しく受け取るもの」なのです。

ネガティブがあるからこそ、自分のレベルを知り、準備を整え、少しずつ前に進むことができます。そして、その一歩一歩の経験が積み重なることで、前の章でお話しした「ポジティブという創造スキル」が育っていきます。

無理にポジティブになろうとしなくても、経験を積み、乗り越え、学んでいく中で、ポジティブは自然と身についていくものなのです。

大切なのはバランス

ここまで見てきたように、ネガティブは重要な役割を果たしていること、そして、ポジティブはネガティブがあるからこそ、経験や体験を通して育っていくものであることがわかりました。

心を科学する認知科学の視点では、ネガティブとポジティブは対立するものではなく、二つで一つのシステムとして捉えられます。

今はネガティブを生かすべきタイミングなのか、それともポジティブを育てるタイミングなのか。それを丁寧に考えてあげることで、感情に振り回されることなく、着実に経験を積み、リスクへの向き合い方の精度を高め、挑戦する勇気や継続力を育てていくことができます。

ネガティブとポジティブのバランスとは、50:50で両方を保つということではありません。シーソーのように、状況に応じてどちらにも自然に行き来できる感覚を持つことを指します。

著作者:freepik

そして、そのバランス感覚は、誰かに教えてもらったり、講座を受けたりするだけで身に付くものではありません。自分自身の実際の経験の中で、試行錯誤を重ねながら、少しずつ磨かれていくものです。

無理にマインドを変える必要はありません。そして、闇雲に挑戦を始める必要もありません。

ネガティブな感情は、あなたの行動を止めるためにあるものではなく、あなたが安全に、そして着実に進んでいくようにと声をかけてくれる、心配性のお母さんのような存在。そして、ポジティブは、「大丈夫、やってみよう!」とあなたの背中を押し、励ましてくれる、お父さんのような存在だと言えるかもしれません。

だからこそ大切なのは、ネガティブとポジティブのどちらかを選ぶことではなく、その両方の声に耳を傾けながら、「自分はどうしたいのか」「どうなりたいのか」「今、どう感じているのか」自分の直感や気持ちに素直でいることなのだと思います。

まとめ:自分の気持ちに素直でいよう

ネガティブもポジティブも、正真正銘あなた自身であり、あなたの幸せを願い、あなたを応援してくれている素晴らしいシステムです。

心配性のネガティブと、背中を押してくれるポジティブ。その二つの想いをどちらも大切に受け止めながら、あなたが幸せになれる選択を、一つずつ選んでいけば良いのだと思います。

「自分はどうしたいのか」「どうなりたいのか」「今、どう感じているのか」

そうした自分の心の声に応えてあげることを、自己実現と呼びます。幸せのかたちは人それぞれありますが、自分の気持ちに素直になって自己実現していくことは、幸せに近づくための一つの方法です。

無理にマインドを変えようとしなくても、大丈夫です。誰かの正解や誰かのやり方に、自分を当てはめなくても、大丈夫です。

自分自身と向き合い、今の自分の気持ちを丁寧に受け取りながら、自分のペースで歩いていく。そんな道を選んでみても良いのではないでしょうか。

あなたは、ありのままのあなたで、大丈夫。あなたはあなた自身を幸せに導けます。

世界中のみんなが、幸せでありますように。

著作者:benzoix/出典:Freepik
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